オンライン利用の衝動を別の行動へ:具体的な代替行動リストの作成と活用
オンラインでの情報収集や人との繋がりは、私たちの生活を豊かにする一方、時に意図しないほど多くの時間を費やしてしまうことがあります。オンラインを使いたいという衝動がふと湧き上がったとき、それに流されてしまい、後で後悔する経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
「少しだけ」と思って始めたのに、気づけば何時間も経っていた。やるべきことがあったのに、オンラインに夢中になってしまった。そうした状況を減らし、より満足のいく時間の使い方をするためには、オンラインを利用したいという衝動が起きたときに、それ以外の別の行動に切り替える準備をしておくことが有効なアプローチの一つとして考えられます。
このコラムでは、オンライン利用の衝動に適切に対処し、自分の時間を主体的に使うための「具体的な代替行動リスト」の作成方法とその活用についてご紹介します。
なぜオンライン利用の衝動に流されてしまうのか
オンライン利用の衝動は、様々な状況で発生します。退屈な時間、何かから逃れたい気持ち、一時的な寂しさ、あるいは特に理由もなく、ただ「なんとなく」スマホやPCに手が伸びることもあるかもしれません。
こうした衝動は、脳が手軽で即時的な快や刺激を求めているサインとも言えます。オンラインの世界には、常に新しい情報や他者との繋がり、エンターテイメントがあり、すぐに満足感を得やすい構造になっています。そのため、衝動が起きた際に他の選択肢が頭に浮かばないと、最も手軽で身近なオンライン利用に自然と流れてしまうのです。
しかし、衝動のままにオンラインを利用した結果、期待したほどの満足感が得られず、むしろ時間の浪費や自己嫌悪に繋がることも少なくありません。
代替行動リストが役立つ理由
代替行動リストとは、オンライン利用の衝動が起きた際に、代わりにできる具体的な行動をあらかじめ書き出しておいたものです。このリストを作成し、いつでも参照できるようにしておくことには、いくつかのメリットがあります。
- 選択肢の明確化: 衝動的な状態では、冷静に他の選択肢を考えることが難しいものです。リストがあれば、「オンライン以外にこんなこともできる」という選択肢がすぐに目に入ります。
- 衝動への対処: 衝動は長くは続かないことが多いとされています。リストの中から行動を選ぶという別の思考プロセスや行動を挟むことで、衝動の波をやり過ごす助けになります。
- 新たな楽しみの発見: 普段オンラインに使っている時間を、リストにある他の活動に充てることで、以前は気づかなかった楽しみや、より質の高い満足感を得られる経験につながる可能性があります。
具体的な代替行動リストの作成ステップ
それでは、実際に代替行動リストを作成してみましょう。ご自身の状況に合わせて、実践可能な具体的な行動をリストアップすることが重要です。
ステップ1:オンラインを使いたくなる「トリガー」を特定する
まず、どのような状況でオンラインを使いたくなる衝動が起きやすいかを観察してみてください。
- どんな場所で(例:ソファに座ったとき、ベッドに入ったとき)
- どんな時間帯に(例:食事の後、家事の合間、夜寝る前)
- どんな気持ちのときに(例:疲れているとき、暇なとき、不安なとき、考え事をしたくないとき)
- 何かの行動の直後に(例:テレビを消した後、仕事や作業が一段落した後)
これらのトリガーをいくつか書き出してみましょう。トリガーが分かると、「この状況になったらオンラインに手を出したくなるかもしれない」と予測し、あらかじめリストの活用を意識しやすくなります。
ステップ2:トリガー発生時にできる「代替行動」をリストアップする
次に、ステップ1で特定したトリガーが発生した際に、オンライン以外でできる具体的な行動をできるだけ多く書き出してみます。このとき、あまり難しく考えず、思いつくままにリストアップすることがポイントです。
リストアップする行動は、時間のかからない簡単なものから、少しまとまった時間が必要なものまで含めてみましょう。そして、抽象的な表現ではなく、すぐに取り掛かれる具体的な行動として記述します。
リストアップの例:
- 短い時間でできること(5分〜15分程度)
- 温かいお茶を淹れてゆっくり飲む
- 窓を開けて外の空気を吸う
- 簡単なストレッチをする
- 好きな音楽を1曲だけ聴く
- 部屋の中の一箇所だけ片付ける
- 家族や友人に短いメッセージを送る(内容を具体的に考える)
- 今日の良かったことを3つ書き出す
- 軽い香りのハンドクリームを塗る
- 好きな写真や本を数ページ眺める
- 少し時間があるときにできること(15分〜1時間程度)
- 散歩に出かける
- 簡単な料理や作り置きをする
- 積ん読になっている本を読む
- 手芸やパズルなど、手を使う趣味をする
- 身の回りの整理整頓をする
- 植物の手入れをする
- 昔のアルバムを見る
- 静かな場所で瞑想をする
リストは、ご自身の興味や生活スタイルに合わせて自由に作成してください。リストアップすることで、「オンライン以外にもこんなにたくさんの選択肢があるんだ」と気づくことができるでしょう。
ステップ3:リストを常に手元に置く
作成したリストは、オンラインを使いたくなったときにすぐに見られる場所に置きましょう。スマートフォンのメモ機能、PCのデスクトップの付箋、紙に書いてデスクや冷蔵庫に貼るなど、ご自身にとって最もアクセスしやすい方法を選んでください。
衝動が起きたときにリストを探す手間があると、結局オンラインを選んでしまいやすくなります。すぐに「これを見て他のことしよう」と思い出せるようにすることが重要です。
代替行動リスト活用のヒントと継続のコツ
リストを作成しただけでは、衝動に流される習慣はすぐには変わりません。リストを効果的に活用し、継続するためのヒントをいくつかご紹介します。
- 完璧を目指さない: リストを見ても、どうしてもオンラインを使ってしまう日があるかもしれません。それは自然なことです。自分を責めるのではなく、「今日は難しかったけれど、明日はリストを見てみよう」と、根気強く向き合う姿勢が大切です。
- 最初は短い時間から試す: 最初は5分や10分でできる代替行動から試してみましょう。小さな成功体験を積み重ねることが、自信につながります。
- 複数の選択肢から選ぶ練習: 衝動が起きたらリストを開き、その時の気分に合うものをいくつか候補に挙げ、その中から行動を選ぶ練習をします。
- 行動できたら自分を褒める: リストの行動を実行できたときは、「よくできたね」「偉いね」と心の中で自分を褒めてあげましょう。ポジティブな感覚が、次回のモチベーションになります。
- リストは定期的に見直す: 時間が経つと、リストの行動がマンネリ化したり、今の気分に合わなくなることがあります。数週間から1ヶ月に一度、リストを見直して、新しい行動を追加したり、不要なものを削除したりすることをおすすめします。
- 記録をつけてみる: 代替行動ができた日や、難しかった日などを簡単に記録してみるのも良いでしょう。自分の傾向や、どんな代替行動が効果的かが見えてくることがあります。
衝動の背景にある気持ちにも目を向ける
代替行動リストは、衝動的なオンライン利用を減らすための具体的なツールです。しかし、衝動の背景に、ストレス、不安、寂しさ、自己肯定感の低さなど、満たされない気持ちがある場合もあります。
代替行動リストを実践しながら、どのような気持ちの時にオンラインに依存しやすくなるのか、ご自身の心の状態にも少しずつ意識を向けてみてください。必要であれば、信頼できる人や専門家へ相談することも考えてみましょう。代替行動リストの実践は、自分自身の心の声に耳を傾けるきっかけにもなり得ます。
まとめ
オンライン利用の衝動に流されず、自分の時間をより有意義に使うためには、具体的な代替行動リストを作成し、活用することが有効です。衝動が起きたときに「オンライン以外にこれがある」という選択肢を持っておくことで、冷静に対処しやすくなり、新たな活動を通して満足感を得られる可能性が広がります。
リストの作成は、ご自身のトリガーを理解し、具体的な代替行動をリストアップすることから始まります。そして、リストを常に手元に置き、まずは小さな行動から試してみることが継続の鍵となります。完璧を目指さず、根気強く、そして自分自身に寄り添いながら取り組む姿勢が大切です。
この代替行動リストが、あなたのオンラインとの付き合い方を見直し、より豊かな時間を過ごすための一助となれば幸いです。